日曜日に読んだ百合マンガ

青い花 1〜3巻

青い花 1巻 (F×COMICS)

青い花 1巻 (F×COMICS)

 うわあ、これは凄い。
 志村貴子という人はとにかく“揺らぎ”を描くのがもの凄い上手い人だ。特に、男装美少女と女装美少年の思春期を描く「放浪息子」、ある日女の子になってしまった男の子を描いた「ぼくは、おんなのこ」など、ジェンダーの越境を描いた作品に傑作が多い。
 その志村貴子が正統派のエスを描いたのだから、つまらないはずがない。
 物語の軸になるのは三人の少女。お嬢様学校に通う、天真爛漫な少女奥平あきら(ストレートだが女同士の恋愛に嫌悪感は無い)、あきらの幼馴染みで進学女子校に通う万城目ふみ(レズ)、ふみの学校の先輩杉本恭巳(バイ)。この三人の他にも杉本に片思いする少女や、その少女の許嫁(♂)、杉本がかつて片思いしていた義兄など複雑に絡み合う恋愛模様を実に丁寧で柔らかい筆致で描いている。
 何が良いって、主人公のふみが全然一途な女の子じゃないのね。とにかく惚れっぽい。ふみの初恋の女の子はあきらだし、それもちょっと優しくして貰えたからだ。そして引っ越してからはずっと従姉のお姉さんに恋しているし、その恋に破れるとあっさりと杉本に惹かれていく。多分この物語で一番「女の子」なのはふみなんだろうね。あと、三人の内二人がストレートとバイなので、ちゃんと男のキャラが出てくる(しかもキャラが立ってるし)。なんか学校の外にもきちんと世界が用意してある感じで、男でヘテロな私としては読みやすかった。
 百合マンガで、ここまでたくさんの登場人物が複雑に絡み合う物語って、他に余り例がないので本当に楽しく読ませていただきました。四巻が今からもの凄く楽しみ。

半熟女子 1巻

半熟女子 1 (IDコミックス 百合姫コミックス)

半熟女子 1 (IDコミックス 百合姫コミックス)

 百合マンガ専門誌「百合姫」に連載中の作品。それにしても百合マンガ専門誌なんて、十年前なら絶対に考えられなかったよなあ。あの頃は、エス文学を読んでいるだけで変態扱いされたもんなあ。
 これまた傑作。登場するレズカップルは二組。ふわふわした長髪に大きな胸という“女の子の記号”を持つ自分に違和感を感じる少女佐倉八重と、自分が女であることを余り意識しないボーイッシュな少女早水ちとせ。最近失恋した英語教師江戸川先生と、派手な男遊びを続ける華嶋マリ。この1巻ではこの二組のカップルが肉体関係を持つまでが描かれる。
 この本では女同士のセックスシーンが描かれるんだけど、それが実に良い。いや、私は当然女同士のセックスがどんな物なのか全く知らないんだけど、そんな私が読んでも実にそれっぽい。お互いに“してもらいたいことをしてあげる”という、読んでいてくすぐったくなるようなセックスシーンに身をよじらせながらニヤニヤしてしまった。ああ、気持ち悪い。絶対に人前では読めない。あと、最初は男性経験豊富な華嶋にされるがままだった江戸川先生が、1巻の後半ではしっかりとセックスをリードして大人っぽさをアピールしているのもなんだか『それっぽい』。近年では最大のヒット作だった百合エロマンガである「少女セクト」のセックスシーンが、どこか異性愛的だったのとは対照的だ。
 2巻を静かに待ちたい傑作。

純粋アドレッセンス

純水アドレッセンス (IDコミックス 百合姫コミックス)

純水アドレッセンス (IDコミックス 百合姫コミックス)

 同じく百合姫連載作品。
 保健委員の奥村ななおと、彼女が一目惚れした保健の先生である松本律子の恋物語。奥村ななお(眼鏡、三つ編み!!!!)の一途な思いに、心を癒され絆されていく松本先生と、その松本先生の大人の魅力に、少しずつとりこになっていくななお。それがけっしていやらしくない、透明な作風で丁寧に描かれる。個人的にはもう少しキャラクターの葛藤みたいなものを描いてくれた方が好みなんだけど、まあページの都合だろう。
 これが初単行本と言うことで、これからもチェックしていきたい。

アシスタント伝奇ケイカ

アシスタント伝奇ケイカ 1 (ジェッツコミックス)

アシスタント伝奇ケイカ 1 (ジェッツコミックス)

はい、いつもの西川魯介先生です。単にレズカップルが出てくるだけで、上の三冊と一緒にレビューするのも憚られるようなバカマンガ。ちなみに今回一番笑ったのは21ページ。あれって、まんが道のあれが元ネタですよね?まあ、いつもの西川魯介が好きなら絶対に損はしないと思います。