R100


土曜日にTOHOシネマズ富山で映画「R-100」鑑賞。
3点。ゴミ。ゴミ映画なんていう生易しいものではなく、映画の形をしたゴミ。

松本監督の映画は全て観ているんだけど、正直なところ面白いと感じたことは一度も無い。
私が松本監督の許せないところは、かつては「シネマ坊主」などの映画コラム集を出版しておきながら、自分が作り手に回った途端に「作ったことが無い人間には分からないかも」とか言い出したところ。
ふ・ざ・け・る・な!
だったら、全国公開などせずに、映画関係者だけを集めて上映すれば良い。特に今作にいたっては、フィルム代(デジタル上映だからフィルムじゃなくてHDDだけど)すら回収できないくらいの大コケなのだから、その方が赤字も少なくなるし本人も満足だろう。

映画そのものの出来の悪さも年間ワースト級ながら、作中で突然登場人物が作品にダメ出しをするシーンがあるのに閉口した。お笑いで言えば、スベリ芸の芸人が「どうして自分がスベッているのか」を真面目に解説し始めるようなもの。
余りにも無様で、怒りを通り越して心の底から哀しくなった。

あと、100歳の映画監督が、突然自分のキャリアをかなぐり捨ててSM映画をとり始める、というメタ映画作品なんだけど、ラストで「100歳にしか分からない」とか言い出すのね。
もし松本監督が心ある映画ファンであるのなら、99歳で大傑作「一枚の葉書」を撮った新藤兼人監督に謝って下さい。

年間ワーストどころか、ここ十年で観た2000本の中でワースト。

「マジック・マイク」


イオンシネマ金沢(旧ワーナーマイカル金沢)で鑑賞。

80点。良い映画でした。

ソダーバーグ最新作。男性ストリップショーを舞台に、人生の岐路に立たされた男の生きざまを描く。
粗筋を簡単に書くと、地方都市の場末のストリップショーパブで看板ダンサーとして働くマイクが、「そろそろ俺も固い仕事に就いた方が良いのかな」と悩むお話。
マイクの悩みというのは、将来が不安定な若者にとっては非常に胸に染みるものだし、随所に垣間見られる格差社会(クレジットのランクが低いと収入があってもローンが組めない)も今や日米共通の社会問題。ということで、男性ストリップショーという非常に特異な世界を描きつつも、テーマ自体は非常に普遍的。老若男女問わず、マイクには感情移入できると思う。

何よりもステージのシーンが良かった!
マイクの弟分で、新人ダンサーのアダムの、若さだけでなんとか乗り切ったデビューステージ⇒基礎練習も板についてきたころのセカンドステージ⇒満を持してのマイクのステージ
と、段階を追って見せてくれるお陰で、「男性ストリップショーがどういうものなのか」「マイクのストリッパーとしての技量の高さ」などがすんなりと飲み込める。
これを説明ゼリフ無しで物凄く自然にやってるんですよ。これぞ、ファインプレーに見えないファインプレー。ソダーバーグはやっぱり巧いなあ、と思いました。


以下ネタバレあり






そして、途中アダムがドラッグにハマって身を崩しそうになったり(すんでの所でマイクが借金を肩代わりして事なきを得る)、アダムの姉と良い感じになったりして、最後はアダムとの世代交代とストリップからの卒業が描かれる爽やかなラスト。
と、非常に良い映画なんですが、このラストがちょっと引っ掛かってしまってねえ・・・。
要するに、「男には引き際というものがあって、引くことも決断。そして、一つの世界から身を引いた後も長い人生があるのだ。まあ、前向きに活きて行こうぜ」ということが言いたい映画なわけだけどさ。
俺はやっぱり「レスラー」のミッキー・ロークみたいな「なんだかんだでリングに戻ってきちまう男」とか、「桐島」のキャプテンみたいな「いつまでもドラフトを待ってる男」の方が好みなんだよね。
いやさ、マイクと同じように28で大学院から身を引いて、漁師とは言え会社員という職業についた俺が言うのもあれだけど、映画の中でくらい諦めの悪いバカな男を観ていたいじゃない?

というわけで、マッチョな男たちが演じる正統派青春ドラマ。
俺はラストに引っ掛かってしまったけど、誰が観ても何かを感じることができると思います。オススメ。

「許されざる者」

9月にイオンシネマ金沢で鑑賞。

50点
悪くはないが、本家と比べると余りにも軽い・・・。

1992年にアカデミー賞を受賞したクリント・イーストウッド監督の代表作のリメイク。原作を西部劇から時代劇に変え、日本流にアレンジ。
監督は「悪人」の李相日(イ・サンイル)、主演は今や世界のワタナベケン。

まず良かった点から。
北海道の大自然が美しい。前半はある種のロードムービー的雰囲気なんだけど、この部分の画面の美しさだけなら本家を超えていると思う。
あとは、アイヌの設定。主人公の奥さんがアイヌだったりとか、同行する若者が原作のガンマンに憧れる少年からアイヌの青年になっていたりとか、作品の端々にアイヌ人やアイヌ文化が散りばめてあるんだけど、これは正解。日本で西部劇をやる難しさは、要するにインディアンがいないからだと思うのね。その点、舞台を北海道にすることで、アイヌという先住民族をインディアン的に登場させることができ、「西部劇らしさ」が出たと思う。

ただ、やっぱり軽いよねえ。
原作はさ、マカロニ・ウェスタンで名を上げ、その後数々のアクション映画でスターにのし上がったイーストウッドが自ら監督・主演で、「亡き妻に不殺を誓った老ガンマン」を演じたから重いわけですよ。
マカロニウェスタンという一つのジャンル映画を代表する男であるイーストウッドが、それまでのキャリアの集大成として西部劇、それも「最後の西部劇」と後に呼ばれるような映画を撮った、という重さ。イーストウッドが放つ弾丸の重さ。それらを果たしてこの映画を企画したプロデューサーは理解していたのだろうか?

ストーリーは、微小なアレンジはあるものの、本当にきちんとなぞっている。当然、その努力は認めるし、概ね成功してるけど、上手く行っているがゆえに日本版の軽さが鼻についてしまう。
渡辺謙も良い芝居をしているけれど、やはり原作のイーストウッドと比べると、「そもそも渡辺謙がこれを演じる意義」を全く感じない。
渡辺謙では力不足、とは当然全く思わないけれど、別に彼は日本の時代劇というジャンル映画を背負っているような役者ではない。

要するに、「『悪人』でそこそこ海外に名が売れた李相日に、世界的に有名な原作で、ハリウッドでも人気の渡辺謙を使って映画を撮らせれば海外でもウケるだろう」というような、安易な考えで映画を作ってしまったということだ。いかにも日本の映画屋が考えそうなことだ。

上映中ずっと、例えば私がプロデューサーか監督だったらどう撮るだろうか、と考えた。
私だったら、高倉健を使ってヤクザ映画としてリメイクする。
そもそも、西部劇、特にマカロニ・ウェスタンと対をなすような日本のジャンル映画って、時代劇じゃなくて任侠映画なのではないだろうか。
香港ならカンフー映画
お約束と様式美、そして理屈抜きの娯楽性の世界。

舞台は東京や札幌といった都会よりも、川越あたりの場末のソープが良いだろう。北海道や九州の、元炭鉱街の古びたちょんの間でも良い(今でもあるのかは知らないけど)。
羽目を外した酔客がソープ嬢に乱暴を働き、警察の介入を嫌った店長は地元を取り仕切るヤクザに仲裁を依頼する。
暴力団への風当たりが強まる中、金銭での解決を提案するヤクザに対して腹の虫の収まらないソープ嬢は昔気質の渡世人を雇い暴力での報復を模索する・・・。
主役が高倉健なら、相棒のヤクザ崩れは北野武、3人目の若造には松田龍平あたりか。敵役にはそう、それこそ渡辺謙だ。
新法以降暴力を発揮できなくなりつつあるヤクザの現状と、終わりつつある開拓時代でのガンマンは境遇が似ているし、任侠映画全盛時代の生き証人とも言える高倉健なら原作のイーストウッドと張り合えるのではないか。

というようなことを妄想しながら、ラストの退屈な戦闘シーンを眺めていましたとさ。
値段分くらいは楽しめるけど、はっきり言って全然オススメしません。レンタルで本作を観るくらいなら、原作を何回でも観かえしましょう。

凶悪


94点。実録犯罪映画にまた新しいマスターピースが誕生。
9月にTOHOシネマズ富山で鑑賞。10月末に石川県でも一月遅れで上映が始まるんだけど、予告編を観たらいても立ってもいられず富山まで観に行ってしまった。

2000年に実際に起こった通称「宇都宮監禁殺人」をモデルにした実録犯罪映画。
4件の殺人事件に関わったとして、暴力団組長・須藤(ピエール瀧)は死刑判決を受ける。そしてある日、雑誌記者・藤井(山田孝之)は獄中の須藤から驚くべき手紙を受け取る。その内容とは、まだ明らかになっていない余罪が3件あり、しかも須藤は実行犯に過ぎず、主犯格がいるというのだ。
藤井は真相を明らかにするべく奔走するが・・・。

元になった事件が似ているためか、「愛犬家連続殺人事件」をモデルにした「冷たい熱帯魚」と少し雰囲気が似ている。そして、リリー・フランキーの弾けッぷりが本当に凄いので、映画ファンなら誰しも「冷たい熱帯魚」のでんでんを思い出すのではないだろうか。
実は、このすぐ後に「そして、父になる」を観たんだけど、リリーが準主役とも言うべき重要な役で出ていて、本当に怖くて怖くて映画に半分も集中できなかった。

以下ネタバレ含みます




雰囲気が似ている2作品だけど、物語の着地点は全く異なる。
この「凶悪」は、ラスト30分でスクリーンの前の我々にこそそのテーマをぶつけてくる。
終盤、藤井は妻から一つの問いを投げかけられる。そして、さらには獄中の"先生"からも皮肉めいた指摘を受ける。それこそがこの映画のテーマであり、「本当に凶悪だったのは誰だったのか?」ということを思い知らされる。
それが何であるのか、是非映画館で観て確かめてほしい。

10月に観る予定の映画

10月はいろいろと日曜日に予定が詰まっているので、何本観られるかは分かりませんが・・・。

☆・・・絶対に観る。
◎・・・絶対に観ておきたい
〇・・・できれば観ておきたい
△・・・興味ある

10/5公開
「R-100」△
「さよなら渓谷」〇
「日本の悲劇」△
「パパの木」△
「黒蜥蜴を探して 美輪明宏ドキュメンタリー」△

10/11・12公開
麗しのサブリナ ニュープリント版」◎
「飛べ ダコタ」◎
「ショート・ピース」◎
「トランス」〇
「逃亡者」△
陽だまりの彼女」△
「クロニクル」☆

10/18・19公開
「ゴースト・エージェント」☆
「人類資金」〇
「ペーパーボーイ」〇

10/26公開
「潔く、柔く」☆
魔法少女まどか☆マギカ 反逆の物語」☆
ドキドキ!プリキュア」☆
グランド・イリュージョン」△
オン・ザ・ロード」△
シャニダールの花」〇

9月に観た映画

映画館で観た新作映画・・・13本

97点「地獄でなぜ悪い
96点「立候補」
94点「凶悪」
90点「そして、父になる」
79点「スクールガール・コンプレックス 放送部編」
75点「ウルヴァリン SAMURAI」
74点「17歳のエンディングノート
72点「ウォーム・ボディーズ
72点「スプリング・ブレイカーズ
69点「マン・オブ・スティール」
60点「エリジウム
55点「劇場版 あの日見た花の名前を僕たちはまだ知らない」
50点「許されざる者

この他にもカナザワ映画祭で5本ほど鑑賞しました。
他にも「パシフィック・リム」の6回目と7回目、「風立ちぬ」の3回目など。
今月は結構観たなあ、という印象。